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Road to ヤクーツク

ロシア留学 応援します

交差

 

私の母がまだ若い娘さんだった頃、

東京だったか横浜だったかへ、はるばる出かけたことがあったらしい。

目的地の桟橋で友人と話をしていると、急に大きな揺れに襲われた。

その時そこには、自分たちの他にも何組かの人たちがいたけれど、みな一様に驚いて、それぞれが手すりにしがみついたりしたらしい。

目の前が海で、しかも土地鑑のない場所での地震がとても恐ろしかったので、母は良く覚えているのだそうだ。

 

 

それから数年後、母は父と知り合ってめでたく結婚した訳だが、あの時の地震の怖かったことを、父に話したことがあったらしい。

 

『そしたらさぁ、』

 

母は言った。

 

『お父さんも、そこにいたらしいんだよ。』

 

『は?』

 

父もまた、若い頃にはるばる東京だか横浜だかへ遊びに行ったことがあり、その時に大きい地震にあったのだと言う。

お互いによく思い出してみたら、それは確かに、同じ日の同じ時間、件の桟橋だった、ということらしい。

 

 

※ ※ ※

 

 

私が学生のころ、バイト先でとても仲良くなった人がいた。

彼女はテルちゃんと言って、姐御肌で面倒見のよい、気持ちの優しいお姉さんだった。

テルちゃんは地元の人だけれど、数年前まで、少し離れた県のT市にある短大に行っていたのだと言う。

T市!  私の彼氏くん(旦那)は、彼の地元の街からT市の高校に通っていたはずだ。

彼氏くんとテルちゃんが話をしてみたら、はたして二人は、ほぼ2年の間、朝の同じ時刻に同じ駅を使っていたのだった。

『あそこのパスタ屋がさぁ~』『そうそう!』

『自転車置き場の工事でさ~』『そうそうそう!!』

旦那とテルちゃんはそれぞれ学校を卒業し、こちらの県に引越し、なぜか私のバイト先で初対面の再会(?)を果たしたのだった。

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

次男とたまに出かける大きな公園は、道路と並行して線路が走っている。

 

電車が来ると、つい

『次男、見て!電車来たよ!』

と言いたくなってしまう。

6年生は、もう電車にテンションは上がらないのだけれど、

こっちは10年以上それを言ってきたものだから、すっかりクセなのだ(苦笑)

 

赤信号で止まっているすぐ傍を、電車は小気味良い音をたてながら通過していく。

 

線路と道路は、思いのほか近い。

私たちのほんの数メートル横を、数百人が通り過ぎる。

駅が近いので、電車がいくらかスピードを落としているせいだろうか、乗っている人の顔が確認できる距離だ。

 

あの中に、これからすごく仲良くなる誰かがいたりして。

私たちが公園に向かう時間と、誰かさんが電車で帰宅する時間、いつも同じで、いつもすれ違ってたりして。

 

助手席の次男を見ると、最近すっかり精悍な顔つきになった次男も、やはり電車の方を見ている。

 

 

あんたの未来の大事な人とか、乗ってるかもよ。

 

そう思ったら、何だか楽しくなった。

 

あ、まてよ、サラリーマンばっかだから、未来のお義父さんかも⁉︎

 

つい、ふふっと笑ってしまった。

 

 

 

 

 

遠くに白い満月がのぼって来たのを見ながら、

そんなことを、考えました。